「トイトレ」は頑張らないでOK
● トイレトレーニング、そんなに頑張らなくて大丈夫です
「もう3歳なのに、まだオムツが取れません」
「同じクラスのお友達はみんなパンツなのに……」
健診や診察でも、ときどきこんな相談を受けます。
先に私の考えを書いてしまうと、
トイレトレーニングは、そんなに頑張らなくて大丈夫です。
もう少し正確に言えば、毎日何度もトイレに座らせたり、失敗しないように親御さんが一生懸命時間を管理したりするような、「特訓としてのトイレトレーニング」は必要ないと思っています。
トイレは、練習すればするほど早くできるようになるものではありません。
子どもの体と心が自然に育って、「そろそろできそう」という時期が来たら、少し手伝ってあげる。くらいで十分です。
● そもそも、2歳半ではほとんどの子がまだオムツです
2025年に発表された、日本の子ども32,168人を対象とした大規模な研究があります。
2歳半の時点で日中のオムツが外れていた子は17.2%でした。
逆にいうと、
82.8%、つまり5人に4人以上は
まだ日中もオムツを使っていました。
ですから、
「2歳半なのにまだオムツ」
「もうすぐ3歳なのに、全然トイレに行きたがらない」
というだけで、焦る必要はありません。
少なくとも、早くオムツが外れることを競争するようなものではなさそうです。
● トイレに行くのは、実は結構むずかしい
大人にとっては当たり前ですが、子どもがトイレでおしっこをするためには、いろいろな力が必要です。
- 膀胱におしっこをためられる
- 「おしっこが出そう」という感覚に気づく
- トイレへ行くまで少し我慢する
- 遊びを中断してトイレへ行く
- ズボンやパンツを脱ぐ
- 便座に座る
身体の発達だけでなく、言葉の理解、運動能力、注意を切り替える力、そして「トイレでしてみよう」という本人の気持ちも必要です。
健康な子どもを乳児期から6歳まで追跡した研究では、昼間まったくおもらしをしなくなった子は、
3歳 52%
4歳 93%
5歳 100%
でした。
また、「おしっこがたまってきた」と尿意を認識できた子も、2歳では31%、3歳では79%、4歳では100%と、年齢とともに増えていました。
つまり、排泄の自立には練習だけではなく、膀胱や神経、認知機能そのものの成熟が必要ということです。
まだできないのは、親御さんの教え方が足りなかったからではありません。
● 早く始めれば、早くオムツが取れる?
「1歳半から始めたほうがいい」
「2歳の夏が勝負」
「3歳までに取らないと大変」
いろいろな話を聞くと思います。
でも、医学的にはそれほど単純ではありません。
約400人を追跡した研究では、早い時期からトイレトレーニングを始めた子ほど、トレーニングをしている期間そのものは長くなっていました。
特に、2歳3か月より前から始めても、トイレの自立が完成する時期を明らかに早める効果は認められませんでした。
また、2021年のシステマティックレビューでも、早い時期から親主導で進める方法と、子どもの準備が整うのを待って進める方法について、どちらかが明らかに優れているとは結論できませんでした。
「2歳になったから始めなきゃ」
「この夏のうちに絶対オムツを取らなきゃ」
と期限を決めて焦る必要はありません。
● 「そろそろかな」と思ったら、少し誘うくらいで十分です
では、何もしなくてよいのかというと、そういうことでもありません。
例えば、
- おしっこやうんちが出たことを教えてくれる
- オムツが数時間濡れないことがある
- 「おしっこ出そう」が少し分かる
- 簡単な言葉での指示が分かる
- 自分でズボンを脱ごうとする
- トイレやパンツに興味を持つ
こんな様子が出てきたら、
「トイレ行ってみる?」
と誘ってみればよいと思います。
朝起きたときや、お風呂に入る前など、生活の区切りで座ってみるのもよいでしょう。
出れば「できたね」。
出なくても、「今日は出なかったね」で終わり。
出るまで何分も座らせる必要はありません。
● 嫌がったら、いったんやめても大丈夫
トイレを見るだけで嫌がる。
便座に座ると泣く。
「絶対行かない!」と逃げる。
そんなときは、一度やめて良いです。
数週間、数か月たってからまた誘ってみると、それまでの苦労が何だったのだろうと思うくらい、急にできるようになることがあります。
これは親御さんが何か特別なことをしたというより、その間に子ども自身が成長したのでしょう。
トイレを訓練にしないことのほうが大切です。
● 特に「うんち」は頑張らせない
トイレでおしっこはできるのに、
「うんちだけはオムツでしたい」
という子もよくいます。
これも、私は無理にトイレでさせなくてよいと思っています。
健康な子どもを前向きに追跡した研究では、トイレトレーニングの途中で約22%、およそ5人に1人が「うんちだけトイレでしたくない」という時期を経験しました。
特に避けたいのは、
うんちをトイレでしたくない
↓
我慢する
↓
便が硬くなる
↓
出すと痛い
↓
もっと我慢する
という悪循環です。
うんちだけオムツでしたければ、しばらくそれでも構いません。
強くトイレでの排便を嫌がっていた子どもについて、一度トイレトレーニングを中断してオムツに戻したところ、多くの子がその後数か月以内に自然とトイレで排便するようになった、という報告もあります。
「オムツに戻したらトイトレ失敗」ではありません。
そもそも、勝ち負けではありません。
● おもらししても、淡々と着替える
小さな子どもはわざと漏らしているわけではありません。
遊びに夢中だったり、尿意に気づくのが遅かったり、気づいてからトイレまで間に合わなかったりします。
できれば叱らず、
「出ちゃったね。着替えようか」
くらいで終わりにしましょう。
毎日何度もする排泄が、親子の戦いになってしまうと、どちらも疲れてしまいます。
トイレは「できるようにさせる」より「できるようになる」もの
子どもの準備が整ってきたときに、少し環境を整えて、少し誘ってみる。そのくらいで十分です。
● トイレトレーニングという「特訓」はいりません
トイレトレーニングについて相談されたとき、私はいつも、
「そんなに頑張らなくて大丈夫ですよ」
とお話ししています。
2歳半では、日本の子どもの8割以上がまだ日中もオムツです。
3歳から4歳にかけて、膀胱の機能も、尿意に気づく力も、言葉や運動能力も大きく成長していきます。
ですから、
- 座れたら、それでよし
- 出たら「できたね」
- 出なかったら、また今度
- 漏らしたら着替える
- 嫌がったら少し休む
- うんちだけオムツなら、それでもよし
そのくらいで十分だと思います。
トイレは親が「できるようにさせる」というより、子どもが成長して「自然にできるようになっていく」ものです。
お友達より少し早くても、少し遅くても構いません。
親子ともに疲れてしまうほど、頑張る必要はありません。
● ただし、こんなときはご相談ください
トイレの自立には大きな個人差がありますが、次のような場合には一度小児科でご相談ください。
- 便が硬く、排便を痛がる
- うんちを何日も我慢する
- 排尿すると痛がる
- おしっこの回数が極端に多い、または少ない
- 尿路感染を繰り返す
- 昼間のおもらしが多く、本人や家族が困っている
- 排泄だけでなく、発達全体についても気になることがある
特に便秘は、「トイトレがうまくいかないから」と頑張るより、まず便秘そのものを治すことが大切です。
焦らず、比べず、頑張りすぎず。
トイレについては、そのくらいでちょうどよいと思っています。
参考文献
- Daytime Bladder Control Status in Toddlerhood Is Associated With Subsequent Bedwetting in Preschool Years: A Nationwide Cohort Study of Over 30,000 Japanese Children. International Journal of Urology. 2025.
- Jansson UB, Hanson M, Sillén U, Hellström AL. Voiding pattern and acquisition of bladder control from birth to age 6 years—a longitudinal study. Journal of Urology. 2005;174:289-293.
- Blum NJ, Taubman B, Nemeth N. Relationship between age at initiation of toilet training and duration of training: a prospective study. Pediatrics. 2003;111:810-814.
- Mrad FCC, et al. Toilet training methods in children with normal neuropsychomotor development: a systematic review. Journal of Pediatric Urology. 2021;17:635-643.
- Taubman B. Toilet training and toileting refusal for stool only: a prospective study. Pediatrics. 1997;99:54-58.

